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*売り切れました
2012.01.01 想像星座群 発行(限定100部)
"clearstory" vol.1
矢部嵩・白鳥央堂 二人誌 『「少女ふたり分の濁点を私にくっつけてください。」』
未発表含むふたりの初期作品集を作りました。44ページ。
装丁・造本は白鳥のリトルプレス"想像星座群"によるもの。すべてハンドメイドです。
表紙はアクリルペイントによる彩色で、一冊一冊表情が異なります。扉には矢部による装画を掲載。
―収録―
矢部嵩「ぺらぺらちょ山」「メルヴィル第六先生の」
白鳥央堂「雷鳴語による新しい音楽」「姉妹(星空の中で)」「綾へ」「肌を粗くおろしてゆく・もえる枯れる声・こえる果てる火の詩」「庭日」
購入を希望される方は、送料込で¥300をいただきます。
daythere☆qd5.so-net.ne.jp(←☆を@にかえてください)までお宛名と送り先住所を明記の上、ご連絡ください。
(造本の性質上、受付から発送までに時間がかかってしまうことがあります。ご了承ください。)
以下に詳細を掲載しています。
―代金内訳―
[1冊分]
表紙用紙/プライク(ネイビー)A4 ¥56
扉用紙/ブルーZトレーシングA4 ¥24
(上記用紙は「竹尾 見本帖本店」での購入です)
本文用紙/KB用紙 低白色再生紙A4 ¥11(一枚約¥1で、11枚使用)
綴じ紐/革紐 ¥84(1m¥420で、20cm使用)
(紐は「ユザワヤ 吉祥寺店」での購入です)
送料/定形外郵便物 ¥120
ここまで計¥295に、
各種絵具、インキ代を¥5にまとめて、切りよく
合計¥300としました。
―ためし読み―
姉妹(星空の中で)全文
私の妹は
天文学者ではないので
あの星と
遠くはなれた
あの星を
ひとさし指で結びます
何か、と聞くと
お姉ちゃんのおなかのあとだと云いました
ベッドに腰かけた妹に
そんなに広くないよと笑ったら
すこしだけ痕が
いたみました
私のいない夜に見つけた
気高いひとり遊び
妹の
想像した
星座群が
夜空を
うめつくして
いきます
私が星を見つけると
それをあかない瞳が追います
私たちは姉妹でした
昼も
また夜も
あとがき全文(読みやすいように改行しています)
仕方のないことに、夜勤明けにはだれもみな頭がおかしくなる。孤独をやり過ごすためにみずから妄執に呑まれるからだ。
ぼくもそのひとりで、朝のまっすぐな道を家に向かって歩きながら「メルヴィル第六先生の」の挿絵をヘンリー・ダーガーに依頼しようと決めていた。
『非現実の王国』の作者の、あのコラージュ/ドローイングでもって醜悪かつコミカルなメルヴィル先生を再現してもらうつもりだった。絶対に嵌まるという確信があった。
ダーガーが故人であることなんて、そのときには些細な問題だった。ズボンが泥で汚れても、掘り起こせばいいとおもった。半年ぐらい前のことだ。
そこからさらに遡ること半年、つまり今から約一年前、二三本の電話による経緯があって、この二人誌が形をとることになった。
本誌の位置づけとしては白鳥の個人発行である想像星座群からの一冊目ということになる。
矢部嵩のふたつの短編は2006年に書かれている。未発表。彼には、独特の"オモシロ小説"と呼ぶべき、
奇想をぐいぐい読ませる他に類を見ない短編小説の在庫が豊富にあるが、その中から毛色の違う二編を選ばせてもらった。
白鳥の五編の詩は2004年から2007年の間に書かれ、とっちらかった紙束の中から矢部が選び、掲載の順番も彼の選による。
偶然にも、この順番は詩の製作順とそっくり重なっている。
断っておくが、作中の誤字脱字およびまちがった日本語の用法について、いっさいの訂正はない。
お互い、当時のじぶんの意図をまるきり忘れてしまうほどに、遠いところへ来た。
いまさら、ただ振り返るしかできないが、懐かしむにはいつまでも挑発的に輝き過ぎていた。
だから、これを、1986年、87年生まれの同級生ふたりの皺のない初期作品集としてではなく、
必死こいた"夏休みの自由研究"のような、久しぶりに学校で友達と会ってまっくろに日に焼けた二の腕を見せあいながら
「おまえ夏のあいだ見ないと思ったらそんなことやってたんか」という、えへへ的なものにしたかった。
はにかんで笑いながら、担任の机に叩きつける気持ちでそっと差し出す、そのようなものにしたかった。
矢部は角川から二作も著作を出し、名実ともに作家になった。
もはや泣きついたってこれほどピュアな「作家になりたい歌」は唄えないだろう。
白鳥は「あんたの詩が好きだと/いっている」と書いた気持ちをすっぽりなくしてしまった。
ああなんということだろう。おそらくザマアミロと思われているのだろう、これら遠ざかってしまった作品から。
ザマアミロ、つまらんことばかりおぼえて、おれらをほったらかしにして、と。
これらの作品以降、矢部はサリー・ブラウン(『Peanuts』)が青春の土壇場で限界までこんがらがったような天才でもって、
行き場のない物語を次々に発表していく。白鳥は少し賢いひとまねこざるになる。
そういえば、ぼくは中学一年の夏、自由研究で手旗信号の教本をじぶんで書き、冊子にまとめた。念頭にあったわけではないが、今でも同じようなことをしているとおもう。